本日、入学式を迎えた新入生の皆さん、入学、おめでとうございます。群馬大学を代表して、皆さんを心から歓迎いたします。
また、ご家族や関係者の皆様におかれましても、さぞかしお喜びのことと存じます。心からお祝い申し上げます。群馬大学のキャンパスがある前橋、桐生、太田は、赤城山、榛名山、妙義山の上毛三山が背後に控えた、自然に恵まれた土地です。
群馬大学の徽章は、大学がこの上毛三山に囲まれていることを表しています。また、ロゴマークはこのような豊かな自然と学生の成長・活躍をイメージしたものです。新入生の皆さんは、このような自然豊かな環境を生かして学問に励み、目標に向かって自らを磨いてください。
さて、群馬大学には、世界に誇る特色として、昭和キャンパスに設置した重粒子線装置を用いる「がん治療」があります。この重粒子線装置は群馬県との共同事業として、百億円を超す巨費を投じて設置されたものです。大学の附属病院に設置された装置としては、世界で2番目、日本では唯一のものです。平成22年に装置が稼働して以来、3,100名以上のがん患者の治療を行っており、一部公的医療保険の適用が認められるなど、先端的がん治療法として今後の発展が期待されています。
このように、群馬大学は「群馬の地に根ざし、知的な創造を通して世界の最先端へとチャレンジし、21世紀を切り開いて行く大学」を目指しています。それでは、ここで学部と大学院ごとに群馬大学を簡単にご紹介します。教育学部は前橋市の荒牧キャンパスにあります。
そのルーツを辿ると、明治6年、今から146年前に開設された小学校教員伝習所に行き着きます。これが同時に群馬大学のルーツでもあります。教育学部では、群馬県及び県内各市の教育委員会や小学校・中学校と連携しながら、1年次から教育現場での実習を体験するなど、実践的なカリキュラムにより先進的な教育を行っています。教職大学院を有する大学院教育学研究科では、高度な専門能力を身に着けた人材や、教員組織のリーダーとなる人材の養成を行っています。また、特別専攻科での特別支援教育プログラムもあります。小学校や中学校での先生の一言は、児童・生徒が自らの目標を決める際に大きな影響力を持ちます。本日、入学された皆さんは、児童・生徒から尊敬され、慕われる立派な教員となるために研鑽を積み、大きく成長してください。
社会情報学部は平成5年に、また、大学院社会情報学研究科は、平成10年に荒牧キャンパスに設置されました。最近の情報技術と情報機器の進化には驚くべきものがあり、人工知能、AIやビッグデータの活用が、毎日のように話題に上(のぼ)るなど、大量の情報が発信され、活用される情報化社会が実現しています。社会情報学部では、このような情報化社会において活躍する人材を養成するため、学問体系の枠にとらわれずに学修する、複合的なコースが設定されています。また、これをさらに発展させた高度なコースが大学院社会情報学研究科に設定されています。社会情報学部と大学院社会情報学研究科に入学された皆さんは、急激に変化する情報化社会をリードして行く実力を身につけてください。
前橋市の昭和キャンパスには、医学系の学部や大学院、研究所があります。医学部は、昭和18年に設置された前橋医学専門学校が前橋医科大学となり、発展してきたものです。地域の医療や高度医療、さらに先端的医学研究を担う、医師、看護師、保健師、助産師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士などの医療人材を養成しています。医学部、大学院医学系研究科と附属病院では、チーム医療や医学研究のための学部・大学院連携コース、MD-PhDコースをはじめとして、様々な教育プログラムが用意されています。大学院医学系研究科や生体調節研究所では、生活習慣病をはじめとする病気の原因解明や治療に向けて、分子生物学的手法を用いた 先端的研究が行われています。医学部・附属病院は、平成26年に判明した医療事故を真摯に受け止め、群馬を中心とする北関東の地域医療の基幹病院として、患者さんお一人おひとりに、安全・安心で質の高い医療を提供する、患者本位の病院を構築する取組を進めてきました。その一連の取組みにより、厚生労働省から、4月1日付けで特定機能病院の再承認をいただきました。医学部や医学系研究科に入学された皆さんは、患者さんやご家族の大きな期待をしっかり受け止めて、医療技術の修得のみならず、医療の倫理を身に着けて医学の勉強に邁進してください。大学院保健学研究科は平成23年に設置されました。これまで行ってきたチーム医療のグローバルな推進活動により、群馬大学は世界保健機関 WHOから日本で唯一の、チーム医療に関するコラボレーティングセンターに指定されています。保健学研究科に入学された皆さんは、このような国際的な環境の中で学び、患者さんの期待に応えられる医療人となってください。
理工学部と大学院理工学府は、桐生市と太田市にキャンパスがあります。理工学部は、大正4年に開設された桐生高等染織学校から発展してきたもので、今年で104年目を迎えます。理工学部と大学院理工学府では、低炭素社会や省エネルギー社会を実現するテクノロジーの研究や防災の研究など、様々な研究を行っています。また、「サイバー技術」と「ものづくり技術」を統合して実現する、いわゆる『第4次産業革命』の基盤となるテクノロジーの研究も行っています。理工学部と大学院理工学府に入学された皆さんは先端的な研究に触れ、あるいは自ら研究に参画することを通して、次代を担う科学者、技術者としての基盤を作ってください。
さて、学部新入生の皆さん、現在、日本社会はサイバー空間と現実空間が融合する超スマート社会へ移行するという「大変革の時代」にあります。また、一方で2030年までに、SDGsと言われる持続可能な開発目標を達成することが求められています。急速に変化して行くこれからの時代で活躍するためには、異分野を理解し俯瞰的視野を持って考える力やコミュニケーション力など、豊かな人間性と高い専門能力が必要です。皆さんは、専門教育の前に、まず、教養教育を荒牧キャンパスで受けることになりますが、緑豊かな荒牧キャンパスでの一年間を有効に使い、豊かな人間性を養って社会で活躍するための基盤を作ってください。そのためには、勉学だけでなく、サークル活動やボランテイア活動などを通して、また、さらに本学が大学基金を用いて支援している海外への留学などを積極的に活用して、国際的に通用する豊かな人間性を養ってください。
大学院や専攻科に入学する皆さん。皆さんは、これまでに培った人間性や知識・技能をさらに高め、社会をより良い方向へと革新していく実力を身につけたリーダーとなってください。大学本部のある荒牧キャンパスからは広い裾野を持つ赤城山が見えます。このように高い山は大きな裾野を持っています。皆さんも、群馬大学で学び、自分の中に裾野の広い「知の基盤」をつくってください。そして、大きな変革の時代を迎えている日本や世界で、リーダーとして活躍する人物となるよう、研鑽を積んでください。
本学では、昨年、「群を抜け 駆けろ 世界を」というキャッチフレーズを作りました。皆さんがこの「群を抜け 駆けろ 世界を」の心意気を持って、世界で活躍する人物となることを期待します。
結びに、これから始まる群馬大学での日々が、皆さんにとって実り多いものとなることを祈念致しまして、入学のお祝いの言葉と致します。
平成31年4月5日
群馬大学長 平塚 浩士