【プレスリリース】喫煙による潰瘍性大腸炎の症状緩和の成因を解明 -喫煙が腸内環境に与える影響を明らかに-
生体調節研究所 粘膜エコシステム制御分野の宮内栄治准教授、理化学研究所(理研)生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの大野博司チームディレクター、順天堂大学大学院医学研究科の大草敏史特任教授、佐藤信紘特任教授、東京慈恵会医科大学附属柏病院消化器・肝臓内科の小井戸薫雄非常勤講師、内山幹准教授らの共同研究グループは、喫煙が腸内環境に影響することで潰瘍性大腸炎[1]の症状を緩和することを明らかにしました。
本研究成果は、禁煙後に潰瘍性大腸炎の症状が悪化する現象の理解につながると期待されます。なお、本研究は喫煙を推奨するものではなく、腸内環境を介した新たな治療法の開発につなげることを目的としています。
今回、共同研究グループは、喫煙者では、潰瘍性大腸炎患者のふん便中代謝産物の芳香族代謝物が増加し、その結果、大腸粘膜付着菌[2]中に口腔内細菌[3]が増加すること、さらに、腸管免疫系が潰瘍性大腸炎の炎症を緩和する方向に変化することを突き止めました。
[1] 潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる原因不明の疾患。自己免疫や腸内環境などが関与するとされ、下痢や血便などの症状を呈する。主にTh2型免疫応答の異常が関与すると考えられている。
[2] 大腸粘膜付着菌
大腸の粘膜表面に直接付着して生息する細菌の総称。その組成は便中の細菌の組成とは大きく異なり、腸内細菌の中でも免疫系との相互作用が強く、炎症や病態に関与すると考えられている。
[3] 口腔内細菌
ヒトの口腔内に常在する多様な細菌群。腸内細菌とは種類が大きく異なる。
本研究は、科学雑誌『GUT』オンライン版(2025年8月25日付:日本時間8月26日)に掲載されました。
・雑誌名:GUT
・公開日:2025年8月25日(オンライン)
・タイトル:Smoking affects gut immune system of patients with inflammatory bowel diseases by modulating metabolomic profiles and mucosal microbiota
詳しくは理化学研究所HP をご覧になってください。