【プレスリリース】アポリポタンパク質による抗腫瘍効果機序の解明-抗腫瘍免疫誘導法開発の基盤となる発見-
群馬大学未来先端研究機構(群馬県前橋市)の二村圭祐教授、太田徳子研究員らの研究グループは、新しい癌治療に繋がる重要な研究成果を発表しました。
近年、がん治療法として手術、抗がん剤、放射線に加え、選択肢として「免疫療法」が注目されています。がん免疫療法は、患者自身の免疫の力を利用してがん細胞と戦うという、これまでとは異なるアプローチです。とくに「免疫チェックポイント阻害薬」の登場により、治療が難しかった難治性がんに対しても効果が現れるケースが報告され、世界的に注目が集まっています。しかし、適応できるがんの種類が限られるなど、多くの課題があります。
これまで、増殖しないように処理したセンダイウイルス(HVJ-E)を、腫瘍内に投与するとがんの増殖が抑えられること、さらに特殊な方法によって免疫細胞(T細胞)を活性化させると投与していない遠隔部位のがんにも効果があることがわかっていました。しかしながら、そのメカニズムは不明でした。本研究では、HVJ-Eのがん細胞内の分子メカニズムを観察し、その本質がこれまで脂質の運搬に関与することが知られていた「アポリポタンパク質D(ApoD)」であることを科学的に証明しました。本研究により①ApoDだけでもがん細胞内の増殖などのシグナルを阻害することや②ApoDとT細胞の活性化の組み合わせでも、遠隔部位のがん細胞に効果があることが初めて明らかになりました。
本研究は、がんの種類によらない免疫療法や、転移したがんなどを含めた全身のがんを標的にしたがん免疫療法を開発するために重要な知見となることが期待されます。
本研究成果は2025年6月20日(金)、米国がん免疫療法学会誌Journal for ImmunoTherapy of Cancerに掲載されました。
- 雑誌名:Journal for ImmunoTherapy of Cancer
- 公開日:2025年6月20日
- タイトル:HVJ-E links Apolipoprotein d to anti-tumor effects
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