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受精卵表層の再構築システムの発見~マウス受精卵において卵(母方)由来の細胞膜成分が取捨選択される仕組みの一端を解明~

[CATEGORY] プレスリリース

群馬大学生体調節研究所(群馬県前橋市、佐藤健所長)細胞構造分野の森田晶人大学院生、佐藤裕公准教授、佐藤健教授らの研究グループは、徳島大学先端酵素学研究所および群馬大学医学部産科婦人科との共同で、哺乳類の初期胚において卵母細胞(母方)由来の細胞膜タンパク質の一部が選択的に分解され、正常な胚発生に向けて細胞表面の成分が再構築されることを発見し、その仕組みの一端を解明しました。

ヒトのような性を持つ生物にとって受精は新たな生命を生み出す非常に重要な生命現象の1つです。たとえば、ヒトでは10数年以上を経た男女からまったく新しい生命が誕生します。この際、受精卵の中では卵(母方、または母性)と精子(父方、または父性)由来の成分が混在しますが、これらの中で必要なものと不必要なものを取捨選択し、個体発生に向けて細胞内を再構築する必要があります。これまで、受精卵内部の成分を分解・再構築する仕組みは知られていましたが、細胞表面(細胞膜)を分解・再構築する現象やそのメカニズムについてはほとんど明らかとなっていませんでした。

今回、私たちはマウス受精卵の細胞膜上に存在する母性タンパク質のうち、グリシンというアミノ酸を細胞内に輸送するアミノ酸輸送体 GlyT1a などに注目し、受精卵の発生を阻害しないような低侵襲性観察システムを確立し、その動態を詳細に解析しました。その結果、受精卵が1度卵割した後の2細胞期胚後期においてこれらのタンパク質が選択的に細胞膜から細胞内へと取り込まれ、タンパク質分解酵素を含むリソソームにおいて分解されることを発見しました。また、この過程には、細胞内への取り込みを制御するクラスリンやPKCというタンパク質リン酸化酵素の活性化、そしてタンパク質分解の目印となるユビキチンの付与が関与することを明らかにしました。本研究によって、哺乳類の着床前初期発生における細胞膜タンパク質の分解制御機構が明らかとなり、受精卵の質を決定づけるタンパク質動態の一端が解明されたことで、今後、卵および胚の質に関する分子的な理解が進むと思われます。

本研究の成果はDevelopment誌(The Company of Biologists社:英国)に掲載されます。

用語解説

クラスリン依存的エンドサイトーシス:エンドサイトーシスとは、細胞が細胞外の物質を取り込む過程の一つ。クラスリン依存性エンドサイトーシスはクラスリンというタンパク質を介したエンドサイトーシス経路である。
PKC:プロテインキナーゼC。タンパク質にリン酸を付加する酵素。これにより細胞外部などからの情報を伝達し、多くの細胞内の現象を制御する。
ユビキチン:タンパク質の修飾に用いられるタンパク質であり、他のタンパク質の分解等に働く。
GlyT1a:アミノ酸の一つであるグリシンを細胞内に取り込むための細胞膜上に存在する輸送体。哺乳類の胚にとって、細胞内にグリシンを取り込む唯一の輸送体である。

本件のポイント

  • 哺乳類の受精卵において卵由来の母性細胞膜タンパク質群がどのような運命をたどるのか、不明であった。
  • 母性細胞膜タンパク質の1つであるアミノ酸輸送体 GlyT1a は、マウス卵の成熟と受精後の初期発生にとって重要であることが知られていた。
  • 今回、マウス受精卵を生きたまま観察できる実験系を構築し、胚発生過程におけるGlyT1aの動態とその制御機構について解析した。
  • GlyT1aは、クラスリン依存的エンドサイトーシスにより卵表面から取り込まれ、その後、エンドソームを経由してリソソームに到達し分解された。
  • GlyT1aの分解はPKC酵素の活性とタンパク質のユビキチン化によって制御されていた。
  • 網羅的タンパク質解析等により未受精卵由来の細胞膜タンパク質を探索し、これらの動態解析した結果、母性細胞膜タンパク質には分解されるものとされないものが存在することが判明した。
  • クラスリン依存的エンドサイトーシスは特に2細胞期から4細胞期への発生に重要であることを発見した。

本件の概要

我が国の抱える深刻な社会問題である少子化の原因の1つとして妊娠・出産の高齢化による不妊が挙げられます。そこには加齢に伴う卵子や精子の代謝機能の低下等も密接に関連しており、SDGs3.7に示されている性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)等にも解決すべき課題として提案されています。実際、不妊症比率は急激に上昇し、卵の質を科学的に理解する必要性が非常に高くなっています。

我々ヒトを含む哺乳類の卵子は母体内で作られるため、その内容物は母体に由来する母性因子によって形成されています。この卵母性因子群は、卵の成熟や受精、初期発生といった重要な時期における卵の質を決定づけ、精子の遺伝子を迎えて受精卵が新たにタンパク質を合成し始めると積極的に分解されます。しかしながら、卵母性因子の中でも細胞膜上に存在するタンパク質群については、外界との栄養や情報の交換など重要な役割が予想されているにも関わらず、哺乳類卵において一体どのようにして分解されるかなど、その運命がほとんどわかっていませんでした。

そこで、まず卵細胞膜上で細胞外からアミノ酸の1種であるグリシンを取り込むアミノ酸輸送体 GlyT1a タンパク質に着目し、いつどのようにして細胞膜上から除去されていくのかを顕微鏡上で観察しました。このGlyT1aタンパク質は未受精卵の成熟や初期受精卵の浸透圧耐性を制御していることが知られています。その結果、GlyT1aタンパク質は初期胚発生における2細胞期の終盤に細胞膜上の局所に集積したのちクラスリン依存的に細胞内に取り込まれ、その後、4細胞期以降にエンドソーム経路を通ってリソソームで分解されることが明らかとなりました。また、この細胞内への取り込みはPKCの活性やユビキチン化によって制御されていることが判明しました。一方で、未受精卵に対する網羅的タンパク質解析等を行い、多数の母性細胞膜タンパク質の同定に成功しました。これらについて、受精後の動態解析を行ったところ、GlyT1aタンパク質と同様の挙動を示すものと母性細胞膜タンパク質でありながら分解されないものが存在することが明らかとなりました。このことから、母性細胞膜タンパク質の分解は選択的に行われることが判明しました。さらに、クラスリン依存性エンドサイトーシスを阻害すると、この母性細胞膜タンパク質の分解だけではなく、胚発生、特に2細胞期から4細胞期への移行が停止することから、このプロセスは胚発生そのものに対して重要であることが分かりました。これらの結果から、クラスリン依存性エンドサイトーシスは哺乳類の卵において細胞膜上の母性因子を取捨選択するためだけではなく、受精卵が正常に発生するためにも必須なプロセスであると考えられます。本研究は、動物の発生において細胞表層タンパク質を再構築する生理的意義とその仕組みを知るための重要な基盤となると思われます。さらに、受精前後の卵においてアミノ酸の取り込みや代謝、浸透圧等がどのように制御され、またその異常がどのような影響を及ぼすのかについて詳しく解析することにより、グリシン等のアミノ酸が未受精卵の質や初期胚発生率に与える影響について明らかにできるものと期待されます。

関連リンク

論文詳細

  • 論文名:Clathrin-mediated endocytosis is essential for the selective degradation of maternal membrane proteins and preimplantation development
  • 論文著者:森田晶人1,2*, 佐藤裕公1*, 小迫英尊3, 小林久江1, 岩瀬明2, 佐藤健1 ‡(1. 群馬大学生体調節研究所細胞構造分野、2. 群馬大学医学部産科婦人科、3. 徳島大学先端酵素学研究所藤井節郎記念医科学センター。*, 共同筆頭著者、‡, 責任著者) Akihito Morita1,2 *, Yuhkoh Satouh1 *, Hidetaka Kosako3, Hisae Kobayashi1, Akira Iwase2, and Ken Sato1
  • Development誌(The Company of Biologists社:英国)
  • 公開日:2021年7月15日(日本時間16時)

本件に関するお問合せ先

(★を@に変更してください)

▮ 群馬大学生体調節研究所細胞構造分野 
教授 佐藤 健
TEL:027-220-8840
E-MAIL:sato-ken★gunma-u.ac.jp 

准教授 佐藤 裕公 
TEL:027-220-8842
E-MAIL:yuhkohs★gunma-u.ac.jp 

▮ 群馬大学生体調節研究所庶務係
TEL:027-220-8822
E-MAIL:kk-msomu4★jimu.gunma-u.ac.jp 

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