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研究紹介
Introduction to one of the GU Research !

新型コロナウイルス研究特集

- 01 「 新型コロナウイルスを知りそして創る」 -

群馬大学 大学院医学系研究科 生体防御学講座

神谷 亘 教授

神谷 亘 教授 プロフィール
コロナウイルスは、もはや説明するまでもないほど一般市民の人にも知れ渡ったウイルスだと思います。「新しい生活様式」という言葉の元に、私たちは生活スタイルを変えなければいけない状況となりました。コロナウイルス以外にもエボラ出血熱、ジカ熱、デング熱など、多くのウイルス感染症が出現しています。しかし、ウイルス感染症は正しい知識を持って対応すれば、感染拡大を防ぐことができるはずです。コロナウイルスとはどういう病原体なのか?ウイルスの研究って?どんなことしているの?といった疑問にお答えします。
「ウイルスって?」
ウイルスって?

ウイルスは細菌とは違うため、ウイルスを「菌」と呼ばないでください。ウイルスは細菌やPM2.5よりも小さいのです。ウイルスは遺伝子とそれを入れる蛋白質の殻の2つの要素しかもっていないため、蛋白質を作るリボゾームやエネルギーを作ることができません。そのため、ウイルス単独では増えることができず、必ずホスト(ヒトあるいは動物)が必要になります。ホストの細胞内の機能を乗っ取り、ときに細胞を破壊し、ときに細胞と共存しながら、自身のコピー(子孫ウイルス)を作ります。

「コロナウイルスって?」
コロナウイルスって?

「コロナウイルス……。」もう聞きたくない単語の一つかも知れません。コロナウイルスとは、学術的にはニドウイルス目に属するRNAを遺伝情報として持つウイルスです。コロナウイルスの塩基数はRNAウイルスの中で最多となる約3万塩基となっています。最初に出てきた細菌の遺伝子はもっともっと長いですが、ウイルスは「菌」ではないのですから、コロナウイルスの遺伝子はRNAウイルスの中で一番塩基数が多いことには間違いありません。コロナウイルスには動物に感染するウイルス(ネコにはネココロナウイルス、イヌにはイヌコロナウイルス)があります。ヒトには、風邪の病原体の一つであるヒトコロナウイルスが存在します。コロナウイルスは、一般的に風邪を引き起こす程度でそれほど病原性が強くないのですが、2002年に発生した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARSコロナウイルスといいます)や2012年に中東のサウジアラビア王国を中心に発生した中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERSコロナウイルスといいます)、そして、今回の新型コロナウイルスの3つのウイルスが重篤な肺炎を引き起こします。

「新型コロナウイルスって?」
新型コロナウイルスって?

2019年末に発生した新型肺炎の正式名はCOVID-19 です。厳密にはCOVID-19は病気の名前であり、ウイルスの名前ではありません。ウイルスの名前はSARSコロナウイルス-2です。このウイルスの名前からわかるように、COVID-19は2002年に発生したSARSコロナウイルス(今後、こちらはSARSコロナウイルス-1になるでしょう)に近縁であることがわかります。

ウイルス学的にはこの2つのウイルスは細胞内に侵入するとき同じACE2(アンギオテンシン変換酵素-2)という受容体を利用します。この受容体は、ウイルスが細胞内に入るための最初のステップでとても重要な過程です。ワクチンなどはこのステップを阻害するようにデザインされます。

今回のコロナウイルスがこれほど感染が拡大した大きな理由は、症状がない人が感染性を持ったウイルスを排出している点であると思います。それに加えて、やはりグローバル化の中で世界の人々の往来が頻繁であることが感染の世界的な拡大に繋がったのであろうと思います。

※受容体:生物の体にある外界や体内からの何らかの刺激を受け取る器官やそれらの器官の構成成分の受容細胞のこと。

「コロナウイルスの研究って?」
コロナウイルスの研究って?

ウイルスの研究には、今や欠かせないものとなっているウイルスの遺伝子操作系という基盤技術があります。わかりやすく言い換えると「ウイルスの人工合成」です。以前はウイルスの表現型を調べるために、薬剤などを用いて人為的にウイルスの遺伝子に変異を導入したり、何代も培養細胞で継代を繰り返し弱毒化したウイルスを分離していました。この方法はとても時間がかかるうえに、ウイルス遺伝子のどこに変異が入るかといったことの解析にも時間がかかります。

そこで、ウイルスの遺伝子を分子生物的な手技を用いて遺伝子に変異を導入し、その表現型を解析しました。

この方法を用いることにより、どこに変異を導入したか前もってわかるため、解析時間を短縮することが可能になりました。コロナウイルスの研究にもこの手法が用いられており、私の研究室でもこの人工合成の系を取り入れてSARSコロナウイルス-2の複製機構や病原性の解明に取り組んでいます。それ以外にも、実際のSARSコロナウイルス-2を用いて、その複製を阻害する化合物の評価に取り組んでいます。

「ウイルス感染症の今後って?」
最後に

最後に伝えなければならないのは、「必ず今後も新しいウイルス感染症は出現する」ということです。「人類の歴史は感染症との闘いである」というのは間違いありません。今後もさらにグローバル化は加速していくため、未知のウイルスは突如出現してきます。これらに対応するには、ウイルス研究者だけでなく、工学系、情報系などの異なる分野との融合的研究を行なうのが重要であると思います。まずは、群馬大学からこのような融合的研究が加速するようにしたいですね。さらに重要なのは若い人材です。もし、感染症対策に取り組みたい、あるいは、ウイルス研究に興味があれば、学科を問わず連絡ください。お待ちしております。

- 02 「新型コロナウィルス 感染拡大防止銅繊維シートの開発」 -

群馬大学 大学院理工学府 環境創生部門 環境エネルギーコース

板橋 英之 教授

板橋 英之 教授 プロフィール

35年前、大学の研究室に入って初めて与えられたテーマが、日本の公害の原点と言われる「足尾鉱毒事件」の現場となった渡良瀬川流域の銅の研究でした。それ以来ライフワークとして銅の研究を続けています。また、15年前に桐生市水道局の技術顧問に就任したのを契機に、光触媒を使った水質浄化の研究を開始しました。

光触媒を水質浄化材料として使うには固体に固定化する必要があります。ガラスやステンレスなど色々な材料に光触媒を塗布した材料を開発していた2年ほど前、桐生市の会合で銅の繊維でカーテンが編める人と出会い、銅の繊維に光触媒を塗布した材料の開発を着想しました。今回光触媒と銅繊維を組み合わせて、新型コロナウイルスの感染拡大防止に貢献できる材料(商品名:GUD シート)が開発できたのも何かの縁と思っています。

光触媒とは
光触媒とは

光触媒とは光が当たると強力な酸化力を持った化学種を生成する物質で、一般には二酸化チタンが用いられています。二酸化チタンは半導体なので光(紫外線)が当たると価電子帯の電子が伝導体に励起され、価電子帯に正孔と呼ばれる正電荷を持った部分ができます。ここに水中の水酸化物イオン(OH-)が触れると電子が奪われヒドロキシラジカル(・OH)が生成します。ヒドロキシラジカルは強い酸化力を持っているので有機物を分 解します。菌やウイルスも有機物でできているので、光触媒表面に触れることで分解され感染力を失います。

新型コロナウイルスと銅について

2020年3月に米国立衛生研究所(NIH)らの研究グループが固体に付着した新型コロナウイルスの感染力に関する論文を発表しました。それによるとプラスチックやステンレス表面に付着したウイルスは48時間から72時間感染力を維持しているのに対して、銅の表面に付着したウイルスは4時間で感染力を失う(不活化する)ことが分かりました。銅は古くから殺菌効果がある材料として知られていましたが、新型コロナウイルスの不活化に対しても有効であることが示されました。

GUD シートの抗菌・抗ウイルス性能

光触媒を銅の表面に塗布したものを作れば高い抗菌・抗ウイルス性能を持った材料ができると考えられます。通常の二酸化チタンは紫外線で無ければ光触媒作用を示しませんが、ここでは屋内の光(可視光)でも触媒作用を示す物質を合成し、銅繊維を密に織った生地にこの光触媒を塗布した「可視光応答型光触媒銅繊維シート:GUDシート」を開発しました。

大腸菌を使ってGUDシートの抗菌作用を検討した結果を図2に示します。光触媒を塗布していない銅繊維シートの場合、30分間で大腸菌の数は10分の1に減少しますが、光触媒を塗布したGUDシートの場合、30分間で5000分の1に減少し、GUDシートには高い抗菌作用があることが分かりました。ウイルス(バクテリオファージ)を使って同様の実験も試みました。その結果、ウイルスの数は10分間で500分の1、30分間で10000分の1となり、GUDシートはウイルスに対しても高い不活化作用があることが分かりました。バクテリオファージはコロナウイルスとは種類の違うウイルスですが、GUDシートは有機物 であれば分解するため、新型コロナウイルスも不活化できると考えています。

GUD シートの使い方
GUD シートの使い方 1

GUDシートの銅繊維は、通常の金属の銅線ではなく、薄い銅箔をポリエチレンポリマーに螺旋状に巻き付けた銅箔糸を用いています。太さは髪の毛くらいで、軽くて柔軟性があり、この銅箔糸で織った生地はハサミで簡単に切れて縫製も容易なため色々な製品に加工することができます。GUDシートで作ったマスクを通常のマスクの上に被せて付けるオーバーマスクとして使用すれば、感染リスクの低減とウイルスの拡散防止に役立ちます。また、バクテリオファージを使った実験から、指に付いたウイルスは10秒から30秒GUDシートでこすることで、98%から99.9%除去できることが分かったため、ハンカチのサイズに縫製して持ち歩くことで、手へのウイルスの付着を軽減できます。ドアノブやエレベーターのボタンなど多く人が触るところにカバーとして付ければウイルスの接触拡散を防止することができます。

GUD シートの使い方 2GUD シートの使い方 3

Summary ...

銅繊維で織った生地に可視光応答型の光触媒を塗布したGUDシートを開発しました。日本政府の英語版 SNSでも取り上げられ、「いいね」が1.7万件と高い数字になっていることから、海外からも注目されていることがわかります。今後は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向けて、更に効果の高い製品を開発していきたいと思います。

最後に

- 03 一般市民用のフード型マスク「自由外出マスク」 -
~ ロックダウンを不要化する新しい社会基盤の提案 ~

群馬大学 大学院理工学府 知能機械創製部門

藤井 雄作 教授

藤井 雄作 教授 プロフィール

みなさんもご存じのとおり、現在世界全体が「新しい生活様式」とロックダウン(=外出自粛、営業自粛を含む、行動規制、経済規制)を併用した対策を取っています。しかし、突然変異を繰り返すウイルスに対しワクチン、治療法の迅速な開発・普及の目途が立たない中、ロックダウン断続状態から脱却する目途も全く立っていません。
私たちは、東京オリンピック、大学入学共通テストなどの実施を保証し、ウイルス感染をコントロール下におく「決め手」として、「自由外出マスク(Distance-Free Mask)」試作3号機を開発しました。

自由外出マスクとは
自由外出マスクとは

「自由外出マスク」とは、ロックダウンを不要化する新しい社会基盤の提案として開発された、一般市民用ヘルメット型マスクです。「自由外出マスク」は ① ウイルスの完全遮蔽、② 軽量な本体、③ 楽な呼吸、④ 安価な製造コストを特徴としています。 試作3号機では特に、② 軽量な本体、④ 安価な製造コスト の観点を重視して開発しました。
今回開発した試作3号機は、国民に配布することを目指す基本機能版、「自由外出マスク」廉価普及版のイメージにより近づくように、ビニール製ビーチボールを転用した気密フード部と、ウエストポーチに収納した機械部(ウエストパック部)で構成されています。

「自由外出マスク」の試作3号機の特徴について
「自由外出マスク」を着用した様子
「自由外出マスク」を着用した様子

「自由外出マスク」の試作3号機の特徴は以下の三点です。
[1] フード内を僅かな陽圧に制御することにより、首のシール部からの外気進入を完全遮断し、ウイルスの侵入を100%遮蔽することができます。ウイルスの外部漏洩は首シール部の気密程度に依存しますが、高いレベルで抑止することが可能です。
[2] 一定流量に制御された吸気により、フード内に常に新鮮な空気の流れを作ります。これにより、肺へ余分な負荷を加えることなく、新鮮な空気を呼吸することが可能になります。
[3] ウエストパック部に納めたポンプによる強制給気、強制排気により、流れ抵抗が非常に大きな高性能フィルタを挿入することが可能になります。これにより、マスク着用時のような息苦しさが無い状態を作ることができます。また、ウイルス死滅装置(紫外線照射器、プラズマクラスター発生器など)、温湿度調整装置を給気側、排気側に挿入することもできます。

本マスクの装着者は、抗体保有者と同様に、自身がウイルスに感染することもなければ、他者にウイルスを感染させることもありません。感染拡大時には、本マスクを全国民一斉装着すれば、簡単・確実に感染を収束することができます。

「自由外出マスク」のこれからについて

私たちは年内に全国民に一人一個ずつの「自由外出マスク」の配布を目指しています。「自由外出マスク」を各国民に一人一台ずつ配布することにより、いつでも簡単・確実にコロナウイルスの感染拡大を収束することができる「決め手」を持つことができるようになると考えています。最悪な感染拡大状況下に置かれていても、「自由外出マスク」を着用さえすれば、自由に外出をすることができるようになるでしょう。そのため、東京オリンピック、大学入試共通テストを始めとするイベント主催者が、状況によっては、自由外出マスク着用義務付けが有り得ることを想定し、あらかじめ対策をしておけば、イベントの中止や延期をする必要は無くなるだろうと考えています。

「自由外出マスク」施策4号機
共同研究者の橋本教授とのツーショット
共同研究者の橋本教授とのツーショット
最後に

国立大学法人 群馬大学

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