平成23年度地域貢献事業
教育学部 教育改革・群馬プロジェクト

平成23年度地域貢献事業

担当者 : 教育学部 小池啓一 学部長・教授

事業概要

 本学部と群馬県教育委員会が喫緊の教育課題を解決するために研究部会等を設置し、以下の事業を実施し実践研究の推進と研究成果の学校現場への還元を図る。各部会等の総括担当者を中心に研究を推進し、年度末に研究経過をまとめるとともに、次年度の方向性を定める。

第1部会.小学校における体育授業プログラムの開発 (講師・鬼澤陽子)

 本部会では、昨年度まで継続的に実施されてきた群馬プロジェクトによって、ボールゲーム領域のバスケットボール・サッカー(平成16-18年度はプログラム作成、平成19-20年度はプログラム普及)、及び陸上運動領域の短距離系、ハードル系、幅跳び系、高跳び系(平成20-21年度はプログラム作成、平成22年度はプログラム普及)における体育授業プログラムの開発に取り組み、このことが群馬県の体育授業の充実に貢献してきたといえる。

 そこで、本年度は、(1)ボールゲーム領域のネット型・ベースボール型を取り上げ、新しい体育授業プログラムを作成すること、及び(2)これまでに作成した体育授業プログラムの普及を引き続き図ることを研究の目的とした。具体的活動として、(1)は群馬大学と群馬県教育委員会との連携により、「体育授業モデル作成専門委員会」を設置し、 体育授業プログラムを作成すること、(2)は授業研究会においてこれまでに作成されたプログラムを活用した体育授業実践を行うことで普及につなげることとした。

第3部会.「子育て学習プログラム」における相互成長モデル構築 (教授・懸川武史)

 「新しい保護者会~群馬の子育て学習プログラム~」

  1. 意義の明確化
  2. 実践
    (1) 東吾妻町立原町幼稚園
    (2) 月夜野北小学校
    (3) 藤岡小野中学校
    (4) 群大附属特別支援学校
  3. 指導案集作成
    群馬県総合教育センターHPに掲載
  4. 研究実践の発表
    群馬県総合教育センター:教育フェスタ(平成24年2月4日)
  5. 学会発表
    発達心理学会 ラウンドテーブルにて報告(平成24年3月9日)
  6. 報告書作成(平成24年3月)

第4部会.特別支援教育の充実 (教授・久田信行)

 「特別支援教育の充実」をテーマに共同研究を実施し、その成果を県内の教員へ発信した。

 「障害者の権利条約」の批准を目前とした現在、特別支援教育は特別な学校だけでなく、通常の学校も含めた学校全体、教育全体の問題である。 特に、通常の学校・学級と特別な場(学校・学級)との接点である「交流及び共同学習」は、非常に重要な課題と捉え、平成23年度のテーマとした。

 大学・県教委の連携のもと、県教委特別支援教育室、県総合教育センター特別支援研究係、群馬大学教育学部、同附属特別支援学校の機関相互の会議を設け、 「交流及び共同学習」の現状について検討を行い、それに基づいて、平成24年1月には「第4回実践交流会」を開催した。

第5部会.教育現場における保護者との連携体制の構築 (教授・清水和夫)

 教育改革・群馬プロジェクトの第5部会は、群馬県教育委員会と連携して「教育現場における保護者との連携体制の構築」をメインテーマとして、学校と保護者・地域との連携による信頼ある学校づくりを目指し、研究、調査活動、教職員や県民の参加による様々なイベント等を実施している。

 事業の主な目的は、次のとおりである。

  1. 学校と保護者の難しい関係性を解きほぐし、保護者と教職員の間の良好な関係を築き上げるための諸方策を研究し、教育現場における実践的な活用に資すること。
  2. 教職員が保護者等に対応するための研修会やワークショップを実施し、コミュニケーション能力等の資質向上を図ること。
  3. 学校と保護者の連携のもとに教育活動を協働して実施し、成果を上げている学校園の活動発表会等を通して学校経営の改善に資すること。
    本事業は平成19年度から継続的に実施し、教職員や県民の多くの方々の参加を得ている。

実施事業等

第1部会.小学校における体育授業プログラムの開発 (講師・鬼澤陽子)

  1. ネット型・ベースボール型における体育授業プログラムを作成
    体育授業モデル作成専門委員会では、ベースボール型・ネット型に関わる実践報告や授業研究の動向について把握した上で、低・中・高学年の学習内容の系統性を踏まえるために、領域ごとに3つの小部会を立ち上げた。 各小部会で作成した単元計画・教材等を原案とした。それらを実際の体育授業で一部実践し、子どもの動きの変容や子どもによる形成的授業評価(実施した授業がどの程度の学習成果をあげていたか)、教師の感想等も参考にしながら、委員会で検討・修正を重ね、体育授業プログラムを完成させた。また、来年度以降このプログラムを検証するための調査・分析方法等も検討した。調査方法の1つに形成的授業評価を用いることとし、複数の学校で毎授業後に調査し、集計することも考慮して、小学校の児童でも回答できるようなマークシートを作成した。
  2. これまでの体育授業プログラムの授業実践(普及活動)
    (1)平成23年度北毛地区小学校体育科授業研究会では、体育授業プログラム「ハードル走」を取り上げた授業を提案し、48名が参加した。
    (2)平成23年度東毛地区小学校体育科授業研究会では、体育授業プログラム「バスケットボール」を取り上げ、44名が参加した。

第3部会.「子育て学習プログラム」における相互成長モデル構築 (教授・懸川武史)

  1. 意義
    ○ 予防的なアプローチへの転換予防的・開発的な教育相談の在り方への要請を踏まえ、平成22年度から「子育て学習プログラム」による新しい保護者会の教育実践を県内で展開している。
    ○ 理論と実践の融合
     家族療法、家族システム論(ボーエン)に基づき、子育て学習プログラムを作成した。
  2. 実践
    毎年県下の園・学校で教育実践が展開されている。
  3. 指導案集作成
    「新しい保護者会運営講座」受講者が学習プログラムを作成した。
  4. 研究実践の発表
     平成23年度ぐんまフェスタにおいて、参加体験型「新しい保護者会」、テーマ「~PTA研修や学級・学年懇談会に新しい風を!~」による研修会を開催した。
  5. 学会発表
    発達心理学会のラウンドテーブル「思春期の子育て支援 -基礎的研究と実践的研究-」(平成24年3月9日)にて話題提供を行う。

第4部会.特別支援教育の充実 (教授・久田信行)

 平成24年1月6日(金)に県総合教育センターを会場に、160余名の参加を得て実践交流会を開催した。

 今回は、県内の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の交流及び共同学習の実践を話題提供していただき、さらに、県内のコーディネータ及び関連の先生方と附属特別支援学校の先生方にファシリテーターを依頼し、9人程度の小グループで研究協議を行った。

 提供していただいた事例に質が高かったことと、参会の先生方の意識が高かったこと、ファシリテーターが優れていたことから、時間が足りないほど熱心に討論がなされ、アンケート結果からも非常に高い評価を得、実践に結びつく有意義な場を設けることができたと言えるだろう。

第5部会.教育現場における保護者との連携体制の構築 (教授・清水和夫)

 平成23年度の主な実施事業は下記のとおりである。

  1.  講演会&実践・シンポジウムの開催
    平成23年11月24日(木)に大泉町文化むらにおいて、東部教育事務所が主管し、国立大学法人群馬大学・群馬県教育委員会の主催行事として「学校と保護者・地域のいい関係づくりinTOBU」を実施した。本事業には小中学校の校長・教職員、各校の支援ボランティア、PTA関係者、社会教育指導員など250名以上の参加があり、活発な意見交換も行われた。
    この他に平成23年10月27日に西部教育事務所主催の「地域と学校のパートナーシップフォーラム」(安中市文化会館)、平成24年1月26日には中部教育事務所主催の「学校、と地域のより良い関係づくり」(群馬県生涯学習センター)の行事に講師・助言者として参加した。 いずれの会も200名を超える参加者があり充実したものとなった。この事業内容については記録起こしをし、報告書として学内及び県内の関係機関に配付した。
  2. 研究物の刊行と配付
    群馬大学と群馬県教育委員会が共同研究した連携事業に関しては
    平成23年度地域と学校のパートナーシップ推進フォーラム「学校と保護者・地域とのいい関係づくり1nTOBU」実施報告書を平成24年3月に作成し、関係機関に配付した。
  3. 講演会への講師参加
    ・群馬県社会教育主事等研修会(平成23年4月27日)
    ・伊勢崎市子供会育成会50周年大会(平成23年11月26日)
    その他講演会や講習会の講師として参加し、保護者や地域と連携した学校経営についての啓蒙に努めた。

期待される成果

第1部会.小学校における体育授業プログラムの開発 (講師・鬼澤陽子)

 群馬県の小学校教員を対象にした体育指導に関する調査結果(2006)によれば、中学校保健体育科免許保有者は少なく、教職経験の浅い教員は体育指導の仕方について不安を抱いていることや授業を展開するための詳細な情報がある資料を望んでいると報告されている。 そこで、本部会では、教材だけを取り上げるのではなく、教材ごとに「指導のポイント」「ゲームを見とる視点」「主な規則」「つまずきと声かけ」を吹き出しや囲みで示し、「単元計画」「指導案」「授業のまとめ方」「教材」「シナリオ」で構成したネット型・ベースボール型におけるプログラムを作成した。 このことにより、授業展開の見通しを持った上で授業に臨むことができ、適切な指導が可能になる。

 折しも、今年度から本格的に実施される小学校新学習指導要領のボールゲーム領域では、ボールゲームの分類がこれまでの種目ベースから戦術ベースに転換される等、大きな変化が認められる。特に、ベースボールに関しては、学習者の活動量が少ない等の理由から昭和52年の学習指導要領から外されたこともあり、授業研究が十分に行われていない。これらの状況を鑑みれば、本部会でネット型・ベースボール型の体育授業プログラムを完成させたことは大きな意味を持つと思われる。

第3部会.「子育て学習プログラム」における相互成長モデル構築 (教授・懸川武史)

  • 県内の園・学校で独自性のある「子育て学習プログラム」により実践された。この実践が「子育て学習プログラム」モデルの検討、再構築の場となっている。
  • 保護者は、ワークに参加することで、学習プログラムでの体験が子育て上の課題解決につながっている。
  • 指導者は、保護者の実態に応じたプログラム作成、ワークショップの企画・運営を通し、課題解決モデルのデザイン、マネジメント力が向上している。
  • ユニバーサルデザインの考えに基づいた実践が行われた。
  • 第3部会の昨年度の報告書の配付、指導案集の群馬県総合教育センターHPへの掲載により、情報発信の機会を得ている。
  • 学会での話題提供により、外部からの評価の機会になった。

第4部会.特別支援教育の充実 (教授・久田信行)

 小学校、中学校、高等学校、そして特別支援学校の交流及び共同学習の実際をまとめて学びかつ協議することが出来たので、参加者は交流及び行動学習の実際と、関連についてかなり把握し、各々の学校で展開する上でのイメージが豊かになったと推察される。

 また、県内の優れた実践に触れることや、実践交流会に参加した経験から、群馬県内の実践には、他県に誇れる実践があることを自覚し、教員の士気も高まったことが推察される。

 群馬の優れた実践や独自の取り組みについては他県に余り知られていない。実践の改善とともに、情報発信も課題であると思われる。

第5部会.教育現場における保護者との連携体制の構築 (教授・清水和夫)

 教育を取り巻く環境が大きく変わりつつある状況の中で学校園と保護者、時には地域住民との関係はかつてないほどの変貌を見せており、時として両者の間に良好な関係が構築されず困難な状況に陥ったり、対立を深めていく場合が少なくない。

 また、保護者からの要求や要望は多様化・複雑化し、学校は立ち往生することも多く見受けられる。

 こうした状況を解決していくためには、学校と保護者・地域との連携・協力をもとにした信頼ある関係づくりが欠かせないものとなっている。

 本事業は、群馬大学が群馬県教育委員会と連携し、様々な角度から、学校と保護者・地域との連携の在り方を研究し、その成果を報告書の作成、研修会やシンポジウム、ワークショップの実施などにより、広く、教職員や県民に供するものである。

 過年度からの本事業に対して教職員、保護者等の積極的な参加や参加者アンケートに見られるごとく、喫緊の教育課題の解決に向けて価値ある取組であると考える。