平成19年度地域貢献事業
医学系研究科 熱中症の正しい理解のための研究会

平成19年度地域貢献事業

担当者 : 医学系研究科(応用生理学) 鯉淵典之 教授

事業概要

本事業の副題は「熱中症を正しく理解し、子どもの命を守るための実践講座」である。現在、熱中症は増加傾向にあり、クラブ活動や体育の時間に生徒が熱中症に陥るのはまれではない。時に命を落とすこともあり、小・中・高等学校の教員やスポーツ指導者が正しい知識と対処法を習得することは監督者として不可欠である。本学大学院医学系研究科器官機能学分野では県教育委員会との協賛で、熱中症の発症機序や対処法について県内中学・高校保健体育教諭やスポーツ指導者を対象とした講演会を平成15年から実施し好評を得ている。  今回は、以前から要望の高かった実習を取り入れたコースを企画した。熱中症のより正しい理解のために、講義と実験・実習を組み合わせる。実習では、学生ボランティアや血液細胞を用いて生体内の水分代謝についての正しい知識を体得してもらう。さらに、現場での救急処置に関する実習も行い、実務上のとっさの判断に役立ててもらうこととした。

熱中症の正しい理解のための研究会

実施事業等

12月26日:参加55名

  • 10:00-12:10講義

    ヒトの体温を維持する機序、熱中症の定義、症状、熱中症を防ぐ様々な人体の仕組み、対処法など途中10分間の休憩をはさみ講義した。(器官機能学 鯉淵典之)

  • 13:00-15:30実習「救急蘇生法について」

    救急蘇生法についての簡単な講義の後、人形を用いて救急蘇生法やAEDの使い方を講習した。(附属病院救急部教員)

講義の模様

講義の模様

救急蘇生実習

救急蘇生実習

12月27日:参加30名

  • 10:00-12:00実習1「体液の変化は血液細胞にどのような影警を及ぼすか?」

    ラットの赤血球を用いた実験:異なる浸透圧濃度の溶液中での血液細胞の形態の変化を、顕微鏡で観察するとともに、溶血度を測定した。(器官機能学教員)

  • 12:00-13:00実習2 「食事によりヒト血中の物質はどのように変化するのか?」

    食前・食後に血糖値を測定した。(器官機能学 鯉淵典之)

  • 13:00-16:00実習3「異なる飲料水は身体にどのような変化をもたらすか?」

    学生ボランティアを使い、異なる飲料水(ミネラルウォーター、スポーツドリンク)を飲ませ、尿量や組成の変化を測定した。(器官機能学教員)

講義の模様

学生ボランティアを使った尿検査

救急蘇生実習

実習後の集合写真(学生ボランティア含む)

期待される成果

地球の温暖化や都市部のヒートアイランド現象のために熱中症は増加する傾向にある。クラブ活動や体育の時間に生徒が熱中症に陥るのはまれでない。時に命を落とすこともある疾患なので、正しい知識と対処法の習得は監督者として不可欠である。専門知識の提供と実地体験を組み合わせた本事業は地域の熱中症の予防に大きく貢献することができる。特に、ボランティアを使い、実際に尿量や比重を測定したり、溶液中での血球形態変化の観察などの実験を伴う実地体験は、予算規模の小さい日常の講習会ではなかなか得られない経験である。  今回の保健体育教諭を対象に行った事業が、校内の他の教員にも啓蒙されることが期待される。講習会の際に行ったアンケートには本講習会が非常に有意義であったとの意見がほとんどだった。特に実際に学生ボランティアを軽い脱水症状態にして異なる飲料水を投与して、その後の変化を観察したことで、適切な水分補給の重要性を認識できたとの意見が多かった。また、講習会終了直後より、県教育委員会には、参加できなかった教員から次回の参加予定の問い合わせが多数寄せられている。今後も可能であれば継続して実施したいと考えている。