平成19年度地域貢献事業
教育学部 多文化共生サポートシステムの開発・実践

平成19年度地域貢献事業

担当者 : 教育学部附属学校教育臨床総合センター 結城恵 准教授

事業概要

多文化共生社会のための地域課題を解決するための事業の内、地域からの要請が高く、緊急性の高い事業として、

1.多文化共生社会の構築に向けた地域医療システムづくりを目指す事業、

2.多文化共生社会の構築に向けた地域防災システムづくりに頁献する事業を実施した。

  1. 多文化共生社会の構築に向けた地域医療システムづくりを目指す事業
    本学の地域頁献事業として6年目の継続事業となった。外国人学校と行政関係機関との連携をより緊密化することにより、健康診断会・健康相談会の一層の質の向上と、行政関係機関による制度化を実現するための方策の検討を図ることを課題とした。
  2. 多文化共生社会の構築に向けた地域防災システムづくりに貢献する事業
    群馬県でも、防災ボランティアぐんま等地域防災市民活動団体が生まれ、さまざま啓発・実践活動が展開するようになっている。そうした機運の中で、災害困難者としての外国人住民に対する関心も高まり、本学が昨年度の地域頁献事業として作成した多言語版防災ガイドブックやパンフレット等の情報提供が要請されるようになった。多言語版防災ガイドブックやパンフレット等の増刷・配布や、大泉町等地域での地域防災イベントに学生ボランティアを派遣し、地域のニーズに応えた。

実施事業等

  1. 多文化共生社会の構築に向けた地域医療システムづくりを目指す事業
    在日外国人学校のうち健康診断の申込みのあつた6校に在籍する児童生徒を対象とした健康診断会を2月22、28、29日の3日間実施した。また、健康診断の結果に基づく保健指導と健康・医療に関わる相談対応を目的に児童生徒とその保護者を対象とした健康相談会を3月20日に開催した。その結果、健康診断会には、437人が受診し、健康相談会には46組の児童生徒その保護者が参加した。  また、「医療サポートシステム」構築のための調査を、健康相談会に参加した46組のうち24組の協力を得てアンケート調査及びインタビュー調査を実施し、幼児期から青少年期に至る子どもの健康に関する多様な不安・相談内容があること、その解決に本学の健康診断会・相談会が寄与していることが判明した。さらに、日常的にこうした健康相談ができる場が求められており、その相談業務の担い手として、行政や大学、ブラジル人関係者によるNPOなど多様な主体が提案された。また、相談方法としては、対面式相談のほかに、携帯電話やパソコンをとおしての相談が提案された。今後は、これらの結果をもとに、本学の「多文化共生教育・研究プロジェクト推進室」を中心に関係機関と連携して医療サポートシステムの検討を図ることとした。
  2. 多文化共生社会の構築に向けた地域防災システムづくりに貢献する事業
    「防災ガイドブック(改訂版)」を作成し、配布依頼のあった県内公立学校、ブラジル人学校、ペルー人学校に対して、日本語版2,000部、ポルトガル語版1,000部、スペイン語版300部を印刷し配布した。  また、大泉町等の地域で開催される防災イベントに「多文化共生教育・研究プロジェクト」参加学生スタッフを派遣した。

外国人学校健康診断会・健康相談会は、医学部附属病院・医学部保健学科・教育学部・社会情報学部がチームワークで行う事業である。教職員にとっても学生にとっても、多文化共生社会の構築に求められる「協働」の必要性を実感する場となる。

診察をする診療部長

診察をする医学部附属病院田村遵一総合診療部長。この6年間の健診の効果は子どもの歯・視力・耳の状態や肥満傾向の改善に顕著に表れているという。

問診を行っている医学部保健学科の講師と通訳の方

問診を行っている医学部保健学科の齋藤智子講師とポルトガル語通訳佐藤さん。生活習慣や子どもの自覚症状を丁寧に聞き取る。そのやりとりの中で、子ども白身が自分の生活と健康をふり返えれるように配慮している。

健診の流れと、健診項目を外国人学校の子どもたちに説明する教育学部の先生

健診の流れと、健診項目を外国人学校の子どもたちに説明する教育学部の学生。子どもの健康啓発につなげるだけでなく、保護者にも健診の必要性を子どもを通して伝えてもらえるようにと説明をしていた。

健診会場を統括する医学部保健学科の佐藤由美教授

子どもたちが安心して診察を受けられるように、医療スタッフ・学生スタッフが正確にデータを収集できるように。健診会場を統括する医学部保健学科の佐藤由美教授の気配りは細部に至る。

期待される成果

  1. 多文化共生社会の構築に向けた地域医療システムづくりを目指す。
    在日外国人学校等健康診断及び健康相談会の継続的な実施により、健康診断を受ける機会の無い外国人学校の児童生徒の健康管理について、児童生徒にも保護者にも広く啓発することができる。また、本事業の企画・運営に多数の行政関係者、医師や保健師等の医療専門職、地域ボランティア、学校関係者の参与があったことから、今後は、市町村等自治体が主催する事業へと転換するきっかけができたと考えられる。さらに、子どもを抱える家族が日本の医療制度や病院診療に関する不安について、アンケート調査を実施したが、この成果を自治体や病院関係者と共有することで、環境改善に寄与する。
  2. 多文化共生社会の構築に向けた地域防災システムづくりに貢献する。
    「防災ガイドブック(改訂版)」は、出身国での地震体験や母語の違いによって、必要とされる情報が異なることを配慮したものであり、そうした配慮の必要性が地域防災施策に盛り込まれることが期待される。また、人口移動が激しい南米系外国人家庭には防災に関する情報を得ていない家庭も多く、本ガイドブックの配布により、子どもを含めた家庭での地域防災に寄与できる。